母になぐさめられ、嬉しかった


昨日15日、私は姉の発言にかなり凹んでいた。
母の様子やケア方法にやっきになっているなら理解するが
『権利書・預金通帳・実印』を私が持っているか、
いいたくないならそう理解する、何故言いたくないのかなど
と言い出したあげくに「(あなたは)誰も何も言わなくなる
理由がわからないでしょうか」と意味ありげに言う気持ちを
私は心無い発言と感じ、こうして自分が評価されたことよりも
アルツハイマーになった母の今後を思う気持ち以上に
別の問題に意識を向ける【実の姉】を悲しかった。

姉が私に向けた陰性感情を母にぶつけやしないかと心配になった。
知らせることで混乱をする危険性もあるが、姉から八つ当たり的な
電話がいくほうがリスキーと判断し、母にこの件について話をした。

「あのね、お姉ちゃんから権利書・預金通帳・実印を預かっているか
聞かれて、それらを預かろうかと話しているというの・・・でね・・・」
「え?誰が預かるって話しているの?」
「ごめん、それが誰かわからないの。ツヨくんとお姉ちゃんが
お母さんの様子を心配して預かるっていうのか、それとも、お母さんと
お姉ちゃんが話していたことなのか・・『ついでだから聞いておく』って。」
「何がついでなのかしらね、冗談じゃないわよ。遠くにいる人間が!」
「遠くに住んでいるしね・・・私はね、お母さんの意思によって
決めることで、私が口をだすことじゃないと思うの。
そう、お姉ちゃんにも言ったわ」
「そうよ、サクチャンの言うことが正論よ。私の意思ですることよ。
もし、預けるなら近くに住むサクチャンに預けるのが普通でしょう。
カエデに預けてどうなるの?どうやって生活するの?バカバカしい。
たまに電話かけてきて口だけ出して何もしないのに。
カエデに預金通帳を預けたらとんでもないことに
なってしまうでしょう。治療費をどうするっていうのよ?」

「私はお姉ちゃんに『お母さんがツヨちゃんと話しあって決めて、
今後、お母さんの治療費と諸経費を出してくれるのであれば、
私は、それでいい。念の為、成人後見人申請用の診断書を
もらってちゃんと処理しておいてほしい。この件については
ツヨちゃんからの連絡を待つから』と伝えたの。」
「その成人なんとかって?」
「高齢者が悲しい目にあっているでしょう。家族であっても
本人の許可がないまま財産などを処分できないように規制が
あって、その手続きの書類のひとつよ」
「そうよね、年寄りが騙されたり、年金を取られる事もあるものね。
それから守られる法律があるのね。ありがたいわね」
「そうなの。高齢者の権利と生活を守るってことね。ありがたい」
「カエデ、焼もちもあるかもしれないけど、この際、財産を・・って
ことのように感じるわ」
「焼もちだと思うの。そういうのじゃなくて心配なんだと・・・」
「サクチャン、もうかばわなくてもいいから。私があんな風に
育ててしまったの。甘やかしたのよ。だから絶対にもうしない。
私のためでもあるしね。もう50過ぎているんだから本人も
自覚をもってほしいわね」

「・・・」「あら?サクチャン、泣いているの?」「・・・」
「何を言われたの?まだひどいこと言われたの?」
「だって・・・『お母さんを含めて、あなたに何も言わなくなるのが
わからないんでしょうか』って。そして『ある時は家族、
ある時は山崎家、ある時は柳家』ってわけがわからないらしい」

「カエデのほうがわけわからないわよ。カエデのほうが
病気じゃないの?サクチャン、あのね、外へ出たら、ご近所が
『奥さん、元気そうね』とか声をかけてくれるのね。そうして
支えられているのよ。カエデは家族よ、でもね、ディサービス
のことも、通院のことも、生活していくことを支えてくれている
のは、福祉の人とサクチャンでしょう。お金の問題はその家、
その家の問題。でも支えあうっていうのはね、
家族だけじゃなくて、他人でも支えあうのよ。
カエデは自分のことで精一杯で、サクチャンがいう『家族』や
何々家っていう区切りを理解していないのよ。悲しいと思うけど
サクチャンは誠実にやっているでしょう?」
「そうよ。私のできることを捜してやっているわ」

「お父さんもおばあちゃんも知っているから、自信を持ちなさい。
私だってね、嘘じゃないわよ。本当に感謝しているんだから。
仕事の合間に電話をくれたり、仕事を調整したり、休んでまで
病院につれていってくれたり、折り紙の本や塗り絵もプレゼント
をしてくれて、一生懸命できることを捜して、私の病気を
支えてくれているでしょう。私もまだまだかもしれないけど、
努力しているのよ。こんなんじゃ、いけないって自分に葉っぱを
かけて一日一日大事に過ごしているの」

「ありがとう、そうだよね。誠実にやっているといいのよね」
「そうよ、カエデが何を言っててもサクチャンはサクチャン。
みんな、認めているんだから。お父さんといつも話しているの」
「お父さん、何て言っているのかなぁ」
「ふふふ、無言よ。もともとおとなしいから。ふふふ」
「ごめんね、この事をお母さんにどのように伝えようか悩んだ」
「悩まないの。正直に言うのよ。病気のことも正直に話して
くれたでしょう。嬉しかったわよ。」
「うん・・・私、お姉ちゃんとのやり取りで、お姉ちゃんから
お母さんに電話がいって、その電話でお母さんの具合でも
悪くなったらどうしよう、と心配だったの。このことを話すと
具合も悪くなるかもしれないし、でも話さないでお姉ちゃんから
いきなり電話が言って、具合が悪くなっても困るし」
「ありがとう。でもね、大丈夫。覚悟も決まっているし。
教えてもらったから、腹をくくって対応するから」
「ごめんね。でも嬉しい。お母さんが気丈夫でいてくれて」
「私こそ、謝らないと。私のことで色々気遣わせて」
「大丈夫。お母さん、私ね、奇麗事を言わないわ。
お母さんの健康は、私のためなの。お母さんが脳も心も
体も健康でいることで、私は安心して仕事もできるし、
私の心のハリと余裕になるの。だから一生懸命にするの」
「ありがとう。そういってもらうと気が楽よ。お互いに
支えあっているということね。これからも支えあっていこうね」
「ありがと・・・」「仕事はいいの?」「そう、やらなきゃ」
「もう、戻りなさい。」「わかった、また電話するから」

こうして母とのやり取りが終わった。
母は極めてまとも。筋も通っているし、受容と共感もある。
いつもオタオタする母にしては珍しい。
こういう母の姿を見るのは過去に1回だけ、17-8年振り。

神様は万事を益としてくださる。
でも、もともと性格的にオタオタする、
アルツハイマー初期と診断を受けた母が大きく感じた。

5月16日
サクラ