歪みのない会話


お昼過ぎ、姉から着信履歴が2回あり。
正気に戻ったのかしら…。

食事を取りに自宅に戻り、母に電話をした。
母の携帯にも姉から着信履歴があるとのこと。
今日も母は「貧乏なうちに行きたくない」と言う。
その言い草になんとなく笑ってしまう。

「つーちゃんは計画的な人だし、しっかりしているから、
カエデがいうように差し押さえになるってこともないだろうし、
桂太の授業料もつーちゃんがちゃんとやっているだろうしね。
カエデが騒いでいるだけでしょう。私は自分のことで精一杯」
「そうね、これから治療費もどうなっていくのかわからないものね」
「そうよ、治療方法があるなら、お財布と相談してやっていくんだから。
カエデは『こっちにおいで』『おいで』っていうけど、そんなお金の
問題を抱えている人に私は自分の将来を任せられないわよ」

母の口から「自分の将来」と出たことがとても嬉しい。
母は愚痴るわりには、希望をもって生きているように感じる。

そして母は
「カエデをあんな風に育てたのは、私が悪いのよ」
「お母さんだけじゃないでしょう?」
「お父さんもね。学生時代、あの子からそれとなくお小遣いが足りないと
言われたら、すぐに送ってたし、荷物もしょっちゅう送って…」
「そうだったね、覚えているわ」
「でしょう!親元を離れて可哀そうって思っちゃって…」
「そうね、でもさぁ、親元を離れて進学ってよくあることでしょう」
「そうよね、お父さんの教え子でもたくさんいたわよね。考えてみると
そうなのよね。はぁ~馬鹿な親だった」
「自分を責めないで。だってよかれと思ってやっていたんだから。
それにある程度の年齢になったり、自分が親になったりすると、
昔の自分を反省したりするでしょう」
「そうよね!そうなのよ!カエデ、サラリーマンの奥さんじゃないわよね。
この前も言ったの、身の丈にあった生活をしなさいって。私、カエデには
バンバン言うでしょう。もうあきれて言っちゃったの」
「そう、身の丈にあった生活ね…」
「そうよ、いくらバーゲンだっていっても衣裳がねぇ、どうしてあんなに
着るものが必要なんだろうね」
「おしゃれが好きな人ってそうだよね」
「誰でもおしゃれが好きでしょう?サクチャンだったら『それ、
まだ着ているの?見るのも飽きたわ』ことが多いけど」
「あら、これでも季節ごとに何か買っているのよ」
「でも、計画的でしょう?無茶買いはしないでしょう」
「確かにしない。だってクレジットで買っても、自分のお金で
支払わなきゃいけないし、住宅ローンもあるし、食べていかないとね」
「結局、自分で払うって感覚がないのね。困ったらお母さんに…と
思っているでしょう」
「ん~どうなんだろうねぇ。神のみぞ知るってことかも」
「ま、知らない!自分の始末は自分でつけるしかないから。
本当に育て方を間違えた。お父さんが言ったとおりだわ」
「え?それも残酷だね」
「あら?知っているでしょう。育て方を間違えたと思ったから
サクチャンの育て方を180°変えたでしょう?」
「うん、聞いているけど…。でも間違われた子は被害者って感じ」
「そうね…でも、サクチャンも言ったでしょう?
ある程度の年齢になったり、親になったりって…」
「あ、言った!(笑)」「サクチャンは全く適当だね(笑)」
「ごねん、だってさぁ、複雑な心境よ」「私も同じよ」

こうして会話が進み、けっしておかしな受け止め方もなく、
こういう会話を振り返ると母に異常が感じられない。

6月12日
サクラ