姉はふつーだった


今日の母は、久々にひどかった。

朝のお薬ですよコールは、8時20分~27分まで何度もかけなおした。
近頃、なかなか出ないので「またおかけ直しください」のアナウンスがあり、
かけなおしが常。そのため、私も仕事に遅れたり、改善する必要があった。

本日は、8時27分に母が出た。
今日もモーッとしている様子で食事をとった後、寝ていたらしい。
「お母さん、薬を飲むわよ」
「うん、ちょっと待ってて、飲んでくる」
ここで水道の音も聞こえ、飲んでいる音も聞こえる。
「はい、飲んだわ」と活きのない声。
「めでたし、めでたし、だね。風邪の具合はどう?」
「ん…もう嫌だ…」と。ここは軽くすり抜ける。
「熱や咳は?」「熱はない。咳もでない」「そう、だるいの?」
「だるいって言うか…夕べ、早く寝たの」
「そう、だるいんだね。朝ごはんは何を食べたの?」
「昨日の残りのシソとありあわせの炒め物と魚」
「ご飯は食べなかったの?」
「少しだけ食べた」
「そう、蒸し暑いから食欲もないよね」
「買い物に行ってないから食べるものもないし」
「食べるものがないかぁ…冷凍庫とかには?」
「たくさんある」
「じゃあ、それを食べて、元気だして、明後日病院に行こうね」
「もう嫌だ、昨日カエデから電話がきてね」と金切り声になってきた。
「そう、お姉ちゃん、何か言うの?」
「あれこれ言うし、もう決めつけて、お母さんは病気だからって。
ふたりで陰でいっていうんだなぁって思っていた」と泣きだす。

「そう、ところで今日、何月何日?」
「そんなのわからない」と更にヒートアップ
「お母さん、今日ね、おばあちゃんの命日だよ」
「え?そう?あ、8月8日…昨日まで覚えていたのにうっかりしていた」
「そう、うっかりしていたのね。じゃあ、薬も飲んだし、おばあちゃんと
一緒にお茶を飲んでね」
「薬?まだ飲んでいないもの」
「え?さっき飲んだわよ」
「だって具合が悪いんだもの」
「具合が悪いんだね、それで薬を飲んよ。電話してからもう15分経つの。
お母さんが電話に出てくれてすぐに飲んでくれたわよ」
「嘘!それは昨日でしょう!だってここにあるもの。8日って書いたものが!
(電話を離れる音…その後、戻ってきて)ほら、ここに1日、2日、3日、4日、
5日、6日、7日、ほらね、ずっと飲んだカラ(包装)を残してあって間違いなく
私は飲んでいるの!馬鹿にしないで!私はボケていない!!」
「お母さん、馬鹿にしていないから、今日はもうその薬を飲まないで」
「あ~そうやって今度は薬を飲むなって、私を殺す気だ」
「…」
「間違わないようにカラまで取っているんだから、私はちゃんと飲んでいるの。
ここに薬の袋があって、飲んでいるの。風邪ひいて、昨日と一昨日は朝も夜も
飲めなかったけど。」
「そう、昨日と一昨日は朝も夜も飲んでいないの?」
「飲めないでしょう。風邪をひいているんだから。ねぇ、お母さんがちゃんと
残している薬のカラは?6日と7日が抜けているの?」
「え?薬のカラ?夜の薬のカラはあるわよ。本当に人を馬鹿にして(金切り声)!
そうやって次から次とまくし立てて、人を追いつめて、私もう嫌だ」
「風邪、大丈夫?」
「風邪?診てくれるひとがいないもの」
「困ったね、私、仕事だし、急に休めないし…」
「医者がいないの!誰がサクチャンに仕事を休めって言ったの!」
「そうだね、病院にはひとりでは行けないしね…」
「そんな力がないもの」
「わかった、病院に往診してくれるか聞いてみるね」
母の罵倒はこんなものじゃなく、すごかった。

病院に電話した。看護師さんが出て、無理っていうので仕方がない。
母にその旨を電話したら、何言っているの?みたいな感じで
「病院に行きたかったら行くから。別に病院にいくほどじゃない」って。

いま、私は思い出しながら泣いている。
母は先日、薬がないと改めてもらったことを理解していない。
病院へいったことは理解しているが、薬はもらっていない…。
ないといったものが出てきたのだろう。
そして、結局、こっちを飲み、あっちを飲み…。
でも、一日に2回同じものを飲んではいないようだ。

ひとまず母から何を言われても、明後日病院へ行く前に
母の家によって薬を全部整理しよう。

姉に久しぶりに電話をした。機嫌がよかった。
息子の帰郷が嬉しいのかもしれない。
姉に「心配で言ってもお姉ちゃんが悪く言うだけだし、
思いこんだらどうにもならないし…3か月前に聞いたことを
『昨日言われた』になっているからしばらく電話を控えてほしい」と伝えた。
姉は「もうね、私にはサクチャンの悪口、サクチャンには
私の悪口を言っているの。もう、あの人、おかしいよ。
アルツじゃなくて認知症じゃないの?」とトンマなことを言う。
「そうだね、アルツは認知症のひとつだからね。それにお母さんの
あっちで悪口、こっちで悪口というのは前からだから気にしないで」
「で、それ今日のこと?」
「そう、私、毎朝8時半に先生(医師)から指導を受けたとおり
薬を飲んでもらうために電話をしているの」
「お母さんはサクチャンから電話は来るといっているけど
毎朝とは言っていないわよ」
「ん?それは仕方がないから…。お母さんには時の概念や頻度の
概念がないからいつなのかわからないの。だから1回するといつもだし、
3か月前のことでも思いだしたとき、昨日とか言うからね。」
「そうか、わかった。あ、それより桂に色々とありがとうね」
「こちらこそ。あ、労災の件だけど…」と普通な会話だった。

これもめずらしい。姉も興奮しやすく、金切り声を出しやすい。
母はもう子育てを終了していて、子供たち(私たち)はすっかり大人。
でも、姉の子・桂太はまだ大学生。
姉が穏やかにいてほしい。どーも母も姉も穏やかにいらないのは
自分以外の問題と考えている。他者の感情に振り回されやすいし、
また他者も自分の気持ちに応えるべきである、といった考え。

寝よう。もう今日は。仕事がはかどらない。
私も自分は自分のはずなのに、今日はさすがに疲れてしまった。

8月8日
サクラ