母の時計


「これ、書けるでしょう…これも書ける…」
母は箱を開けて、放っておいた古いボールペンの試し書き中。
手元の7本を先ほどから20分以上も繰り返している。
こうして何度も…何分も繰り返している様子から
いかに母が時の概念を失ったか理解する。

そろそろ気が済む頃なので(勝手な憶測だけれど…)
「お母さん、それが終わったら、お茶を入れてほしいな」と声をかける。
「あ、もう、これで終わりだから」と母の中では最後の1本の試し書きをした。

母はボールペン、サインペン、シャープペンシルの3種類の
試し書きしていたけれど、質感がわからないようで
「ねぇ、これ(シャープペン)って、キャップがないのに
書けるのね(乾いていない)」と言う。


時の概念、質の概念、この2つは明らかに母の中で失われている。

9月21日
サクラ